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咢が王様なパラレル小説です。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13


 ファミレスで一時間ほど飲み食い語り、イッキ達と別れた後、初めて見る大きなスーパーで買い物をして、亜紀人はアパートに向かった。大型店の総菜コーナーはヤバかった。目に飛び込んでくるもの全てが楽しくて、美味しそうに見えて、ついつい買い込んでしまう。
(ここは豊かな国だ、やっぱり)
 朝昼兼用の食事を終えたばかりの亜紀人だったが、夜の分と王の昼食、と色々見て回っている間に籠はいっぱいになってしまった。中には半額などのシールが貼られている特売品もあったが、できるだけ新しく作られた物を選ぶようにした。新鮮な物は何だって体に良いと、栄養学の先生に教わっていたからである。今はお湯を沸かして果物を輪切りにするのが精一杯だが、これから料理も覚えたい。自分は、一般人としてこれからの長い人生をこの国で生きていくのだから。
(勉強した色々な事、こうやって、役に立つとは思わなかったな)
 頭の中で栄養価を計算しつつ選んだ食料は、ゆうに二日分はあった。イッキや仏茶が居れば、ものの数分で消えてしまいそうだが。トイレットペーパーと大きな袋を二つ提げて、ふうふう言いながら坂道を登る亜紀人の姿は、荷物が歩いているようだった。


 こんな時、A・Tがあれば確かに楽なのだろう、自分のことだから派手に転んで、荷物をぶちまけるかも知れないけれど。
 聞いた話では、イッキ達のA・Tは、工場でB品扱いの廃棄処分となったパーツを寄せ集めて作ったものらしい。失礼ながら、着ている服や言動から、どう考えてもあれだけ高級な玩具を買い与えてもえらえるような裕福な家庭環境ではなさそうなイッキがA・Tを持っているのが不思議だったのだが、これで合点がいった。
 仏茶は特にA・Tの構造に詳しいらしく、亜紀人のA・Tを一緒に組んでくれると約束した。亜紀人の携帯には、さっそくイッキを除く三名の連絡先が登録されている。イッキは携帯を持っていなかった。


(うれしいなァ、次に集まる時は呼んでくれるって言ってたし、…楽しみ!)