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咢が王様なパラレル小説です。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15




 アギトをアパートに迎えて、二人暮らしを初めて五日が過ぎた。亜紀人を最も悩ませたのは、生活習慣の違いだ。庶民の暮らしに慣れない、というような事ではない。アギトは好き嫌いなく何でも食べたし、洗濯物を畳むくらいはしてくれた。ただ、重度の夜行性なのだ。夜が明ける頃まで眠らないし、昼を過ぎても目を覚まさない。しかも。
「お前は寝てればいいだろ」
 そう言って、夜になるとA・Tを履いて外に出ようとする。主君に単独で深夜徘徊などさせられないと、亜紀人も同行を申し出るのだが、アギトは渋い顔をする。
「はァ…お前が一緒とか、たるいっつーか、足手まといっつーか、邪魔なんだよな…」
 ここまではっきり存在を否定されると、いっそ清々しい気分にさえなる。王の言い分は解る、彼は夜の町をのんびり散歩したいわけではないのだから。
「でっでも、こないだみたいに、不良とかに絡まれるかもしれないじゃない?ボク、王に何かあったら、Mr.SANOに合わせる顔がないよ」
「オレは強い」
「そういう事じゃないでしょ、ボクは、君を、守らないとっ、」
「守る?ハ?お前が?オレを?」
 切れ長の目を嘲笑するように細められて、亜紀人は俯いて掌を握り締めた。怒ってはいけない、アギトは暴言は多いし口調はぞんざいだし他人の気持ちを思いやる能力が欠落しているにも程がある駄目人間だが、これは彼の責任ではないのだ。
(落ち着け、ボク)
 はーっと息を吐いて、亜紀人はぐっと顔を上げた。
「王よ。あなたがボクなんかよりずっとずっと強い事は、わかっています。だけど、日本でのあなたの身の安全を守る事は、ボクの最後の大切な使命なの。だから、折れるわけにはいかないんです、笑われたって、っ」
「………」
 アギトの目は、笑ってはいなかった。黙って、じっと亜紀人の方を見ている。罵声を予測して身構えていた亜紀人は、拍子抜けした。そのまま睨み合って数秒後、亜紀人の方が根負けして、視線を逸らしてしまった。
(なんなんだろう、あの、目)
 まっすぐすぎる視線が、辛い。


「なァ」
 畳の上に器用にあぐらをかいた若き王は、亜紀人の頭を軽く小突いて、こう続けた。
「アイオーンの奴、お前にそう言ったのか?オレを、守れとか」
「……?」
「お前がサノって呼んでる奴の、本当の名前だ」
「………」
 当たり前だ、本名であった筈が無い。だが、幼い頃から心の支えであった彼の名を、こんな形で唐突に知った事は、少なからずショックであった。彼は、アギトの臣下なのだ、自分に仕えていたわけではないーそれを、改めて思い知った。
 亜紀人の複雑な気持ちを知ってか知らずか、アギトの声色はいつもより柔らかかった。
「あいつが、そう、言ったのか?」


 違う。
 彼からの、仕事の依頼は、君とー